長岡是好日

2017.04.07

近くて遠い


東京行きの「とき」に揺られ、十数年前の春を思い出す。
長岡駅から新幹線で東京、そこから乗り換えて・・。
初の単身での上京だったし、電車すらろくに乗ったことがなく、乗り換えのメモを何度も取り出しては電光掲示板と照らし合わせていた。
そわそわしているうちに、あっという間に到着。
“東京”って結構近いんだ。
長岡って便利な田舎だな。
そう思った。

初めて住んだアパートの横にはミカンの木が植わっていて、季節外れの実を付けていた。
寒さが残る新潟の春とは違い、“東京”の日差しはあまりにも温かく、調子が狂って風邪をひいた。
雪国の空模様を陰鬱と厭がる友人もいた。
だが、私は月に一度しか晴れない空や突然ざるをひっくり返したように雪や霰が降ってくるような、そんな気候がなぜか好きで、上京してなおさら好きになった。
しかも望めばたったの1時間半で帰ることができる。
故郷がすぐそばあるように思っていた。

大学の入学式を無事に終えて毎日オリエンテーション漬けの毎日。
すぐに友だちもできるわけもなく、ぎこちなく日々が過ぎていく。
そんな中で実家の祖父が突然逝ってしまった。
青天の霹靂。
自宅葬のため急ぎ家に帰ると近所のじい様やばあ様、先に駆け付けた親戚が迎えてくれた。
「ゴールデンウイークには帰るから」と意気揚々と家を出た新潟の朝が愛おしかった。


東京駅から乗り換えて横浜へ。
1時間ほどかけて友人の結婚式会場に到着。
大学時代の懐かしい顔が私を迎えてくれた。

「久しぶり。今どこに住んでるんだっけ?」
「新潟だよ。長岡」
「わぁ遠いところから、お疲れさまだね」
「そんなことないよ。たったの1時間半」
「新幹線でしょ。遠いって(笑)」


新幹線で最速1時間半もかかるのだから。
確かにやっぱり、実は遠いのだ。
「おまえのう、うちを離れるゆうがんはこういうことらっけな。覚悟がいるがあろ」
と祖父の葬式で、死に目に会えなかったとこぼす私に、近所のじい様が言った言葉が頭を巡った。
気の持ちようで越えられない距離がある。